あなたが転職する上で、もっと言ってしまえば社会人として働く上で、「キャリアプラン」を考えることはとても重要なことです。「キャリアプラン」を立てずに転職活動を行うのは、地図もなく旅に出るのとおなじことです。最近良く耳にするようになった「キャリアプラン」ですが、いったいどういうものなのか、ここで説明致します。
「キャリアプラン」とは一言で言えばあなたの「人生の設計図」です。自分の夢や目標、それに近づくための具体的な行動計画表です。何を夢や目標にするかは人によって違います。100人いれば100通りのキャリアプランがあります。つまり、キャリアプランに正解はなく、それぞれ自分に合ったキャリアプランを立てればいいわけです。
今まで1度もキャリアプランを立てたことがないからといって、悲観することはありません。キャリアプランは立てるのが早ければ早いに越したことはありませんが、1度立てたらそれを盲目的に貫きとおすものではなく、人生の岐路に応じてその都度修正を加えていきます。キャリアプランは「完成することのない設計図」です。では、キャリアプランを立てることは、転職活動において具体的にどんなメリットがあるのでしょうか?キャリアプランを立てたことがない人は今から早速考えて見ましょう。
【人生を長期的な視野で見通せる】
忙しい毎日のルーチンワークをこなすだけでは、短期的な視野でしか物事を見ることができません。キャリアプランを立て、将来を見越した長期的な視野で見てることで、「夢や目標を達成するためには、自分が今どんな行動を取ればいいか」が分かります。
【自分に最適な転職先企業を選べる】
転職活動を進めていくと、いつのまにかキャリアアップの「手段」のはずだった転職が「目的」にすり替わってしまうことがあります。しかし明確なキャリアプランを立てることで、転職活動の目的を明確にすることができ、転職活動が長引いても軸がぶれずに最後までやり通せます。
次は具体的なキャリアプランの立て方をご説明します。実は、キャリアプランには「長期的キャリアプラン」と「短期的キャリアプラン」の2つがあります。将来を見通す上で、この2種類のキャリアプランを立てるのが重要になります。まずは、長期的キャリアプランの立て方から見ていきましょう。
【長期的キャリアプランの立て方】
「長期的キャリアプラン」を立てるときにまず考えて欲しいのが、「将来の自分像」です。10年後、20年後、あなたは何処でどんな生活を送っていたいかを具体的に考えることです。その時に、そんな10年も20年も先のことなんて分からないと適当に考えるのではなく、できるだけ具体的に考えてください。どんな企業でどんな仕事に携わっていたいか、結婚・子ども・家族構成は、どこに住んでいたいか、マイホームか賃貸か、マンションか一戸建てか、休日はどんな風に過ごしたいか…など、それが具体的であればあるほどキャリアプランは実現しやすくなります。
遠い将来を考える際には、自分で自分にリミットを掛けてはいけません。本当はこうなりたいけど、現実的にはこの辺が無難かな…などと自分で限界を決めてしまったら、実現できるキャリアプランはそれが上限になり、それ以下の未来しかありません。現実を見るのも大切ですが、現実ばかり見て自分の可能性を狭めるのはやめましょう。
次に、今考えた「将来の自分像」を実現するためには何をすればいいのかを考えます。必要なスキル、必要な知識、必要な経歴、必要な人脈、必要な資金…など様々でしょう。そして、それらを身につける方法を考えます。しかし、ここで注意して欲しいのは、これらは全て「将来の自分像」の実現のための「手段」にすぎないということです。「目標」と違い、「手段」は替えが聞きます。やたら時間が掛かったり、お金が掛かったり、効率的ではない方法は自分に合う方法にどんどん変更していきましょう。
「長期的キャリアプラン」を立てたら、次はそれを「短期的キャリアプラン」に落とし込んでいきます。
【短期的キャリアプランの立て方】
「短期的キャリアプラン」は「長期的キャリアプラン」を見ながら立てていきます。「将来の自分像」を見ながら、何歳までにこれを実現したいなど具体的な目標をそれぞれに設定します。ここでは、極端に非現実的な計画は立てずに、現状では無理かもしれないけど頑張ったら実現可能、というレベルの計画を立てます。
時期を定めた具体的なプランができたら、こんどは「長期的キャリアプラン」で考えた「将来の自分像」の実現に必要なスキルや経歴などを身につけるための具体的な行動を考えましょう。「ビジネスシーンで通じる英語力を30歳までに身につけたいから、27歳から英会話教室に通おう」、「38歳までにはマイホームが欲しいから、35歳までに年収600万を目指そう」など、できるだけ具体的に決めます。その小目標を達成するまでのロードマップがこの「短期的キャリアプラン」になります。
「長期的キャリアプラン」でも述べましたが、「目的」と違い、「手段」は代替が利きます。「目標」に至る道は無限にあります。自分に合わない方法なら無理して続けるのをやめ、ほかの方法を探しましょう。そのためには、日ごろから様々なことに広くアンテナを張っておきましょう。また、「短期的キャリアプラン」は「長期的キャリアプラン」と連動しています。「長期的キャリアプラン」に見直し・修正があった場合はその都度「短期的キャリアプラン」の見直しを行いましょう。
「キャリアプラン」を立てる上で、今の自分を把握するのはとても重要になります。自分の能力や特性を知り、足りない能力を補ったり、自分の強みを延ばして行きましょう。自分の能力を知るには「自己分析」を行う必要があります。「自己分析」では自分の特性や人生観、能力を把握しますが、「キャリアプラン」を立てた人ならば自分の人生観(何を大切に思い、行動するか)は把握できていると思います。ここでは、自分の特性と能力の把握について説明します。
自分の特性と能力を把握するには「キャリアの棚卸し」を行います。「キャリアの棚卸し」はいわば自分用の職務経歴書です。自分の経験職種、その経験から身に付いたスキル、残した成果を書き出していきましょう。まずは、時系列順に経験した職種・職務を書き出します。その際に役職や参加したプロジェクトの内容、参加人数、使用したソフトウェアや言語、環境、自分の役割なども併せて書きましょう。そしてできるだけ具体的に実績を書きます。数値を用いて表すと客観性が出て良いでしょう。それぞれについて自己評価とその理由も書き加えます。
「キャリアの棚卸し」を行うと、自分の経験がどのようなスキルに結びつくのかが良くわかるでしょう。また、改めて振り返ってみなければ「コミュニケーション力」「リーダシップ」などの目に見えにくい能力の把握は難しくなります。自分では分からない能力を知る1つの方法として、あなたの身近にいて、あなた良く知る人に聞いて見るのもよい方法です。様々な切り口から自己分析を行ってみましょう。
【年収相場を知る「リクルートエージェントのキャリア査定」】
「リクルートエージェントのキャリア査定」は、あなたの年収相場を無料で査定し、さらに各業界の動向を知ることができるサービスです。「あなたの業界・職種の転職市場動向」、「年収相場」、「おすすめのキャリアプラン」の3種類の切り口からあなたのキャリアを査定します。リクルートエージェントのキャリアカウンセラーが1人1人診断しますので、時間は掛かってしまいますが、その分コンピュータの自動回答よりも正確な診断結果が返ってきます。リクルートエージェントのWEBサイト上から必要事項を入力すれば10日以内にメールで結果が返ってきます。
「リクルートエージェントのキャリア査定」の特徴は「業界の転職動向」や「おすすめキャリアプラン」が詳しく診断される点です。同じ業界内で転職する人も、未経験の業界を目指す人も、業界の動向を知るのは大切なことです。その業界の将来性を良く見極めて、転職を成功させましょう。。
【ITスキルを診断する「マイナビ転職のITSSスキル診断テスト」】
「マイナビ転職のITSSスキル診断テスト」は「IT Skill Standard」の略称で、ITのスキルを診断するためのテストです。IT業界に必要な仕事の内容を分類し、経験した仕事の規模・複雑性に基づいてスキルレベルを規定しています。
「ITSSスキル診断テスト」では現在のあなたのスキルが数値で表されます。その数値を基に、目標レベルや全体平均とのギャップを見ることができるので、今後伸ばすスキルの良い指標になります。「マイナビ転職のITSSスキル診断テスト」を受験するには「マイナビ転職」に登録する必要があります。「マイナビ転職」の登録は無料で行えますし、転職に必要な情報も同時に手に入れることができます。
最近よく聞く言葉に「キャリアコンピタンシー」という言葉があります。「キャリアコンピタンシー」とは「自分のキャリアプランの実現に向けて、積極的に自分や周囲に働きかける能力」、「突然のキャリアダウンなどに備える。または対処できる能力」のことを言います。終身雇用制が崩壊しつつある現在、大手企業といえど定年退職まで面倒を見てくれる保障はどこにもありません。突然のクビやそうでなくとも減給・思うように昇給しないなどの可能性も考えられます。そのような社会の中で、私たちにはどのような不測の事態にも対処できる能力が必要不可欠です。
また、特にIT業界は最も変化の早い業界の1つです。変化が早い分、数年続いたトレンドが急に次の日には古いものになる可能性も多くあります。ですので特にIT業界で働く私たちにとって「キャリアコンピタンシー」が重要になってきます。具体的には行動力・思考力・分析力・自立性を身に付けることです。ほんの数年後の未来であっても、私たちに予測することは困難です。ですので、たとえどのような事態に陥ったとしてもそこから這い上がれる。または、被害を最小限に抑える準備を事前にしておくことが重要です。
さらに、「チャンスを逃さない」ことも重要になります。近い将来、大きなプロジェクトを任された時に、それを遂行できるだけの能力がなければ、その大きなチャンスをみすみす逃すことになります。「キャリアプラン」で描いた「将来の自分像」を実現するためにも、今後必要となる能力・スキルについては早めに身につけておきましょう。
もしあなたが今の会社はなんか合わない気がする…という理由だけで転職を考えているのならちょっと待ってください。転職はあなたが思う以上に大きな負担になります。同僚・上司に打ち明けたり、もし家族が反対するのならその説得も必要になるでしょう。そして必要書類の作成や面接対策など実際の選考過程も時間が掛かります。そして無事内定が決まっても引継ぎや入社のための準備もあります。とても軽い気持ちでできるものではありません。「転職」の決断は「キャリアプラン」の構築、「自己分析」を済ませた上でそれでも自分のキャリアップの手段として、転職が必要だと思ったときに初めて行ってください。あなたのキャリアアップに「転職」はマストではありません。転職をしないで済むのならそれが一番です。一連の転職活動に注ぐ情熱と時間があるのなら、同じ時間で学べることはもっと多いからです。転職を「目標」と捉えないで、あくまでキャリアアップのための「手段」だと位置づけてください。
しかし、今のままの会社では大きなプロジェクトを任されない、会社の体質的にこれ以上のキャリアアップは望めないなどの、どうしようもない問題も出てくるでしょう。その問題を解決するための手段として転職を行ってください。その時には転職に至った問題を解決できる企業を選ぶことが大切です。転職先でまた同じ問題に直面しないためにも転職先企業は慎重に選びましょう。「転職」は「将来の自分像」実現のための手段です。常に5年後・10年後の自分を思い描き続け、目標を見失わないようにしましょう。
キャリアアップの手段は何も転職だけではありません。キャリアアップをするには転職をせずに、社内でキャリアを積む方法もあります。あなたが今の会社に不満や問題が出たときに「転職」の他にも対処法はあります。あなたの今の不満を誰かに話しましたか?愚痴の言い合いになって結局答えが出ない同僚にお酒の席で話すよりも、上司に話したほうが問題は解決しやすいでしょう。不満があるからといって、安易に転職に逃げるようなことはせずに、まずはその問題を解決する方法を考えて見ましょう。一番よくないのは自分1人で考え結論を出すことです。
社内でキャリアを積むには、自分のスキルを磨くことが重要です。「ITSSスキル診断テスト」などで自分の穴を埋め、強みは延ばして行きましょう。社内で実績を残すことも大切ですが、あなたの能力を認めてもらうには分かりやすい資格を取得するのが近道です。客観的にあなたのスキルを判断できるIT系資格を取得しましょう。新しいスキルを磨いておけば、将来そのスキルが必要なプロジェクトに誘われたときに、すぐに飛びつくことができます。また、業界の動向を知ることも必要です。常に情報感度を高くしておき、IT業界のトレンドの波に乗り遅れないようにしましょう。しかし、これらの努力をしてみても、これ以上社内でキャリアアップが望めなかったり、先が見えない場合もあるでしょう。その時はもう一度自分のキャリアやキャリアプランを見直した上で「転職」を検討して見ましょう。